モロッコ旅の達人 岩間ひかるです。
モロッコを旅した人の間で繰り広げられる会話のひとつが
ぼったくりに対する怒り、嘆き。
もしくは、こんなにお手頃価格で買いました、の披露。
ちょっと面倒くさいのですが、モロッコでは
特にスークで土産物系の買物をする際には
相対価値効果
が働きます。
相対価値効果とはなにか
日本では値札が付いていない商品なんて、ほぼ見ません。
仕入れ値+売り手の利益+消費税をあらかじめ加算した値段がついています。
売り物には勝手に値段が付いているもの、というのが多くの地域では当たり前です。
しかし、モロッコの特にスークにあるお土産物屋さんでは
値札をほとんど見かけません。
お店屋さんが計算できないのではありません。
値段は相手次第で変わるのです。
つまり、モノの価値はあなたが定めるのです。
さぁ、困りましたね〜(笑)
あなたにとってのこのモノの価値はナンボ?
実際の例を交えて説明しましょう。
私は以前、ちょっと出かける時に財布と携帯電話を入れられるくらいの
小さいショルダーバッグを買いました。
スークを歩いていると、ちょうど良い大きさのバッグを
たくさん作っている工房を見つけたので、店主に値段を聞きました。
あっさり、50DH。
この価格は、私が心のなかで付けた価値と同じくらいだったので、
店主の言い値で購入しました。
家に帰って、モロッコ人の夫にカバンを見せて
これいくらだったと思う?と尋ねると、彼は20DHと言いました。
ほぅ、モロッコ人的にはそう値付けるかぁ、と思いましたが。
私は50DH払っちまったじゃないか、コンチキショー!
とは1ミリも思いませんでした。
なぜなら、私がそのバッグに自分なりに付けた価値が40〜50DHだったから。
自分なりに付ける価値というのは、
- その人の経験や先見力
- 自分の意志を伝えるコミュニケーション力
- そのモノに対する執着心
によって、いかようにも幅を持つものです。
売り手の目的は利益を最大化すること
購入した小さなバッグは、とても役に立ちました。
冬の時期にはジャケットの下に掛けられてセキュリティ上もバッチリ。
ただ、ある時に気付いたのです。
革のショールダーベルトの一部が、切れそうになっている。
一枚革なので部分的に薄いところがあって、ちょうどその部分が切れそうでした。
仕方がないのでベルトを結んで使っていました。
更にはメモ帳などを落ち歩くこともあったりして、
バッグがもう少し大きかったらな、と思うようになりました。
そこで、またあの工房を探して大きめのバッグを買いに行くことにしたのです。
スークの奥の方はいまだに私にとっては迷路気味なことと、
自分の記憶の曖昧さが相まって、欲しいサイズのカバンを吊るしていた
別のおじさんの工房に入りました。
すると私が目当てのデザインはそこにはなかったので、
語学に自信のなかったおじさんは、言葉が達者な若者を呼びました。
彼に自分が欲しい内容を伝えると、彼が数軒先の工房に連れて行ってくれました。
まさにそこが、私が最初の小さいバッグを買った工房でした。
手頃なサイズとデザインのバッグはありましたが、
ベルトに金具を付けて長さ調節ができるようにしたかったのと、
バッグの開け口に金具を使って欲しいのだと伝えました。
おじさんは、別のカバンから金具を取って付け替えてあげると快諾してくれました。
作業の取り返しがつかなくなる前に、値段を尋ねると
店主ではなくて、連れて来た若者が250DHだと言いました。
それに対して私は、それは高いね。私の値段は100DH。
だって、小さいバッグが50DHだったもの。
と伝えると、
100DHなんてNothingだよ〜
と言って、彼はどこかに行きました。
そうだね、100DHなんてNothingだよね、その若者にとっては(笑)
売り手の最大の目的は、利益を最大化すること。
そのためにご用聞きをして、うんちくを並べ立てて、
そのものにどれだけの価値があるのかを述べ立てます。
実物の原価は変わりませんが、それらの付加価値で、買い手の値付けも変わってくるのです。
その若者の価値は、私が探していた工房に連れて来たこと。
私の言い値の100DHでは、自分の取り分はNothingだわ〜、と言っているのです。
若者が去った後、残された店主と私。
店主は手の平に「120」とボールペンで書きました。
ほら、やっぱり(笑)
おじさん、改造ヨロシク!
その辺にある道具を使って、手早く改造されていきます。
ついでにおじさんは、私の小さなバッグの修繕もしてくれました。
でき上がったバッグは、ちょっと不器用な仕上げだけども、
まぁ、良しとしましょう。
帰り際、120DHにちょっとだけチップを加えて
あの若者にちょっとあげてね、と言って店を出ました。
自分なりの価値を伝えることをおそれない
自分の付けた価値に、正解も不正解もありません。
よく、「見当違いな値段を言って、失礼にあたったらどうしよう」と
気をもんでいる人が居ますが、それは無駄な思案です。
それよりも失礼なのは、自分なりの価値を言わないこと。
そんな人は売り手と買い手の試合を放棄しています。
以前、こんな旅行者が居ました。
ランチにタンジーヤを食べたいと言っていましたが、場所が分かりにくいので
私が一緒にそこまで案内することにしました。
その道すがら、興味のあるものを見つけては
店主でなくて私に値段を聞くのです。
いくらだと思う?と。
私が自分で買ったことのあるものなら値段を知っていますが
そうでないものは分かりません。
なので、私なりの値段を答えていました。
彼はそれをもって、店主と値段交渉をしているのです。
彼女はいくらだと言っている、と。
さすがに最後は店主に言われていました。
「あなたの値段はいくらなわけ?」と。
そのとおりだと思います。
だって彼は、自分で考えるということを放棄して
他人のふんどしで相撲をとっているようなものですから。
Have a nice match!!よい試合を!
だから、欲しいものがあったら
自分なりの価値を見極めたうえで、店主と試合をしてください。
値段に納得できないなら、買わなければ良い。
そこから別の店を探し周る労力や時間が惜しいなら、妥協するか、最後まで闘えば良い。
納得してお金を払ったのなら、うしろを振り返らなければ良い。
ただそれだけ。
スークでの買物は試合です。
あなたの目利き度を鍛錬して、良い試合をしてきてください!